皆さん、こんにちは。
久喜市の歯医者「ハートデンタルクリニック」院長の定岡です。
最近、身近になってきたインプラント。
失った歯の治療の選択肢として、インプラント治療は今や第一選択になりつつあります。
しかしインプラントも万能な治療法ではありません。
今回はインプラントのことについて少し掘り下げてみましょう。
インプラントと天然歯は何が違うのか?
①繊維のバリアがない
天然の歯では、歯ぐきの内部に繊維が伸びていて、歯と密接に絡みついています。
これは、歯と歯ぐきの付着を強化するほか、体内への細菌の侵入を防ぐバリアの役目も担います。
歯を失うと、この繊維の多くも一緒に失われます。
そのためインプラント周りの歯ぐきは細菌に弱く、「歯周病」になりやすいのです。
②歯根膜のクッションがない
天然の歯には、歯の根と顎の骨の間に「歯根膜」があります。
厚さ0.5mmにも満たないごく薄い組織ですが、伸び縮みする無数の繊維が、歯の根と顎の骨を強固に結びつけています。
いわば歯の根と顎の骨の間にあるクッションのようなもので、噛んだときに様々な方向から生じる力を吸収・分散させ、過剰な力が骨に加わらないようにします。
また、噛んだときに硬さや感触をセンサーのように感知して、無意識のうちに噛む力を調整する機能もあります。
一方インプラントは、人工歯根のチタンと顎の骨が直接結合しています。
クッションやセンサーの働きをする「歯根膜」が存在しないため、そのぶん過剰な噛む力によりトラブルが起きやすいのです。
インプラントも歯周病になる?
インプラントの歯周病も、天然の歯と進行の仕方は似ています。
インプラントに付着したプラークがその周りの歯ぐきに炎症を起こし、腫れや出血を起こします。
これは専門的には「インプラント周囲粘膜炎」といいます。
そして悪化すると、顎の骨にも炎症が及ぶインプラントの歯周病=「インプラント周囲炎」となります。
周囲炎が進むと、骨が失われて、インプラントが抜けてしまいます。
顎の骨が失われる点は共通していますが、歯周病では、実は炎症は骨には及んでいません。
炎症と骨の間には常に歯ぐきがあって、細菌の骨の内部に入り込まないよう防波堤となっているのです。
しかしインプラント周囲炎では、骨の内部に細菌が入り込み、炎症が起きています。
いわば骨炎や骨髄炎と同じです。
ですから周囲炎は、インプラントを失いかねないだけでなく、生体にもより危険な状態といえます。
過剰な噛む力がインプラントのもちに影響
インプラントと顎の骨の間には、噛む力を吸収・分散させる「歯根膜」がありません。
そのため、過剰な力が加わった場合、インプラントや骨にダイレクトに負担がかかります。
その結果、インプラントがかけたり割れたり、連結パーツが緩んだり歪んだりしてしまいます。
そして悪化すると、インプラントと顎の骨が剥離してインプラントが抜けてしまうこともあります。
強い力がインプラントを支える骨に加わり続けると、インプラント周囲の顎の骨の破壊が加速してしまうのです。
インプラントのメインテナンス
インプラントのメインテナンスとは何をするのでしょうか?
おもに以下の内容をしていきます。
❶出血を診る
インプラントと歯茎の間に、プローブという細長い器具を差し込みます。
この時出血したなら、細菌が歯ぐきに炎症を起こしている証拠です。
❷ポケットの深さを測る
プローブには目盛りが付いているので、差し込んだ際に深さが何ミリかも測定します。
最初にインプラントを入れたときのポケットの深さから変動があるかを調べます。
❸膿が出てないかを診る
プローブを差し込んだ時に歯ぐきから膿が出てこないかを診ます。
歯ぐきの炎症が進むと、インプラントと歯ぐきの間のポケットが深くなり、膿が出るようになります。
❹レントゲンを撮る
レントゲンを撮影して、インプラント周囲の顎の骨の状態を診ます。
❺インプラントの動揺を診る
上部構造を外してアバットメントを触診します。
顎の骨に炎症などの異常が起きている場合、揺れて動きます。
❻噛み合わせのチェックをする
噛んだときに違和感はないか、過剰な力が偏ってかかってないか、歯ぎしりの影響はないかなどをチェックします。
❼インプラントのクリーニングをする
上部構造やその周りの歯ぐきの溝も含め、インプラント全体をプロの手で徹底的にクリーニングします。
インプラント治療は咀嚼機能を回復してくれるとても良い治療です。
しかし、治療費が高額であったり、体への負担も少なからずある治療です。
せっかく頑張ってインプラント治療をしたのですから、ちゃんとメインテナンスで長持ちさせて、おいしい食事を一生楽しみましょう!