埼玉県久喜市青毛の歯医者 | ハートデンタルクリニック |

コラム

歯周病と早産の関連性


皆さん、こんにちは。
久喜市の歯医者「ハートデンタルクリニック」院長の定岡です。
今回は、歯周病が及ぼす多様な悪影響の中から特に妊婦さんに与える影響について、お話していきます。

歯周病に関連する細菌は、これまでに数百種類が報告されています。
その中でも、フソバクテリウム・ヌクレアタムは歯周病菌の中でも多数を占める、ごくありふれた口腔内細菌なのですが、悪条件が重なると恐ろしい事態を引き起こすことが明らかになっています。

 

母親の口腔内と子宮との関連性

2010年の英文の産婦人科学会誌に、衝撃的な症例報告が掲載されました。
ある女性の出産時に赤ちゃんが突然動かなくなり、そのまま心拍が停止してしまいました。
その後分かったこととして、母親は出産前から妊娠関連歯肉炎による歯肉からの出血を認めており、死産の3日前に上気道炎を起こし、37.8度の発熱をきたしていました。
遺児の解剖の結果、驚くべき事実が明らかになりました。
胎盤、臍帯(へその緒)、胎児の肺(肺炎による浮腫と出血を起こし重量は通常の2倍に増加)と胃に、多量の細菌が認められ、死因はフソバクテリウム・ヌクレアタムによる劇症肺炎及び敗血症と結論づけられたのです。
胎児の大腸にフソバクテリウム・ヌクレアタムは存在しなかったため、死産直前の感染であったと考えられます。
感染経路を同定するために、母親の「膣、直腸、歯肉縁上プラーク、歯肉縁下プラーク)から採取したサンプル中の細菌遺伝子を解析したところ、胎児で確認されたフソバクテリウム・ヌクレアタムと遺伝子型が合致したサンプルは歯肉縁下プラークのみでした。
これらの解析結果から、歯肉縁下のフソバクテリウム・ヌクレアタムが、血管を介して子宮内に転移し、肺炎と敗血症により胎児の命を奪ったことが、世界で初めて明らかになったのです。
考察では、死産3日前の上気道感染が母体の免疫機能を弱め、その隙をついて、フソバクテリウム・ヌクレアタムが子宮内に到達した可能性が指摘されています。

*歯肉縁上プラーク:歯ぐきの上の細菌。主に虫歯に関係する細菌。
*歯肉縁下プラーク:歯ぐきの下の細菌。主に歯周病に関係する細菌。フソバクテリウム・ヌクレアタムもここに存在する。

 

歯周病菌が早産を誘発する

フソバクテリウム・ヌクレアタムの感染症研究の第一人者であるハン博士の研究によれば、フソバクテリウム・ヌクレアタムは、死産だけでなく早産にも関わっている可能性を示唆しています。
2009年に発表された研究によれば、早産の兆候が認められた妊婦46名を調べてみると、早産を起こした妊婦の2人に1人の割合で羊水中に細菌が同定されたのです。
同定された細菌のうち、最も高頻度(33.3%)に認められた細菌は、フソバクテリウム・ヌクレアタムでした。

 

口腔と胎盤の細菌叢

歯周病菌が早産、死産に関わっていると言う事実は衝撃的ですが、口腔と胎盤をつなぐさらなる事実は、近年の遺伝子解析技術の進歩によって解き明かされてきました。
ベイラー医科大学の研究によれば、胎盤における細菌叢は口腔と最も高い相同性を示したとしています。
口腔から遠く離れた胎盤が、お互いに似た細菌叢を有することは驚きですが、この事実もまた、歯周病菌が血管を介して遠隔転移している事実を示唆するものと考えられます。

妊娠を希望されている方は、風疹・麻疹の抗体検査とあわせて、口腔内の状態も整えていきましょう。
妊娠されている方も、歯周病治療は可能です。
気になる方は、ご相談ください。


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