一般的に「親知らず」とは、前歯から数えて8番目にあたる奥歯のことで、およそ20歳前後に生えてきます。
もともとない人もいますが、あっても生えてこなかったり、中途半端に横に倒れて生えたりすることもよくあります。
歯磨きをやりにくく、虫歯になったり、歯茎に炎症を起こしやすかったりと、問題を起こしがちです。
抜歯をしておいた方がよいこともあります。
なぜ放っておくと
よくないの?
放っておくと以下のようなことが起こりえます。
消炎処置をして症状がおさまってもまたいずれ再発しますので、計画的に抜歯することをおすすめします。
また年齢が若いほうが比較的骨が柔らかいため抜歯しやすくなります。
何年も先送りにしすぎると、抜歯が難しくなることもありますので注意しましょう。
- 親知らずの周囲が腫れる
- 親知らずがぶつかっている歯に虫歯ができる
- 親知らず周囲に歯周病が広がる
- 噛み合わせが悪化する
- 頬粘膜に潰瘍ができる
- 蜂窩織炎※になる
※蜂窩織炎とは皮膚やその下の組織に起こる細菌感染症のこと。
親知らずの炎症は舌の下、頬、下顎、そして首へと周囲の軟組織の隙間をつたって急速に広がりやすいのが特徴。悪化すると入院になることもある。
どうやって抜く?
深く埋まっている、根が抜きにくい形に曲がっている、骨を抱き込むようになっている、歯根の先のすぐ近くに太い神経が通っているなど、親知らずの生え方は様々です。
横に向いて生えてきている場合の親知らずを抜歯する一般的な手順を示します。
- 麻酔をします。
- 親知らずが見えるように周囲の歯肉を切開します。
- 抜くときに妨げとなる親知らず周囲の骨を最小限削ります。
- 親知らずの頭の部分を切削器具で削り分割し、除去します。
- 歯根を揺すって脱臼させ、残った歯根を抜歯します。
- 炎症で汚れた組織を除去し、洗浄して縫合します。
- 止血を確認後、注意事項の説明と薬を出して終了です。
当院では痛みを最小限にした親知らず抜歯を行っています
歯医者に行くのが怖い、嫌いという理由の第一は、局所麻酔の痛みです。
親知らず抜歯をするのに局所麻酔は避けることができません。
しかし、この痛みを軽減する方法はいくつかあります。
局所麻酔の痛みには、主に「針を刺す時の痛み」と「麻酔薬を入れる時のしびれるような痛み」があります。
刺すときの痛みには、あらかじめ表面麻酔のジェルを使い、極細の針を使い、口の中の痛みの少ない場所に刺します。
麻酔薬を入れる時のしびれるような痛みは、麻酔薬を体温と同じ程度に温め、電動局所麻酔注射器を使ってゆっくり注入することで痛みを限りなく少なくすることができます。
親知らずの難抜歯には笑気麻酔を採用しています
局所麻酔と併用して笑気麻酔を併用することで、治療に対する不安や恐怖を軽減し、患者さんをリラックスさせて治療することも可能です。
笑気麻酔とは笑気ガスと酸素の混合ガスを鼻マスクから吸入し、リラックスして治療を受けることができる方法です。
全身麻酔のように意識を失うようなことはなく、ふわふわとした心地よい状態で抜歯をすることができます。
お薬を服用している方へ
降圧剤、抗血小板薬、抗凝固薬、骨粗鬆症薬、ワーファリンなどのお薬を様々な病状で処方・服用されている方は必ず事前に申告をお願い致します。
抜歯などで特に注意が必要な薬についてご案内します。
高齢化が進む現代社会では、脳梗塞などの脳血管疾患や不整脈などの心疾患に対して、抗血栓薬や降圧剤を服用する患者さんが多くなっています。
また、骨吸収抑制剤を服用・使用している骨粗鬆症の患者さんが急増しています。
従来は、抜歯前にすべての抗血小板薬や抗凝固薬を休薬するのが普通でした。
しかし、現在この考え方は見直されており、服用する薬の種類や、行う手術の侵襲の度合いによって治療を行うのが一般的です。
最も重要なことは上記の薬(降圧剤、抗血小板薬、抗凝固薬、骨粗鬆症薬、ワーファリンなど)を来院前に勝手に止めたり中止したりしないことです。
薬を止めたときの副作用、血栓症などのリスクがあります。
来院時に、親知らず治療と並行してできる適切な薬の飲み方をご案内します。
可能であればお薬手帳と直近の血液検査データをご持参ください。
抜歯当日の注意事項
1.体調管理
抜歯当日の体調がすぐれない時は延期しましょう。
処置中に気分が悪くなったり脳貧血を起こしてしまっては大変です。
遠慮せずにお申し出ください。
2.当日のスケジュール
抜歯後に大切な用事(お出かけや会食など)を入れるのはやめましょう。
3.食事
抜歯後麻酔が効いていてうまく食事が取れません。
抜歯前には必ず食事を済ませてからご来院ください。
4.薬
医師から服用の中断指示が特にない場合は持病のお薬は普段通り飲んでご来院ください。
特に抗血栓薬の自己判断による中断は危険です。
止血処置をしっかりといたしますのでご安心ください。
抜歯後の注意事項
1.食事
麻酔が効いたまま食事をとると、頬や唇を噛んでしまいます。
抜歯当日の食事は麻酔が切れてからとって下さい。
2.飲酒
過度な飲酒は血圧を上昇させ、脈拍も上がります。
痛みや出血を引き起こしかねませんので、抜歯当日は飲酒を控えてください。
3.運動
運動も飲酒同様、痛みや出血を引き起こします。
ジムで筋トレしたり、ランニングしたりは控えてください。
4.歯磨き
抜歯当日の歯磨きは無理せずにお休みしても大丈夫です。
さほど痛みがない方は患部以外の歯磨きを丁寧に行ってください。
ただし、ブクブクうがいは血餅(かさぶた)が剥がれてしまうので控えましょう。
5.お風呂
湯船に入ってもよいですが、長風呂は控えましょう。
夏はシャワー浴にしましょう。
どんなふうに治る?
抜歯当日
抜いたソケットの周りの骨からジワジワと血が染み出て溜まります。
翌日
血が固まって血餅(ゼリー状のかさぶた)になり、むき出しのソケット内の骨を守ります。
2週間後
穴の上が粘膜でふさがり、下からは新しい骨ができていきます。
3ヶ月後
まだ骨は柔らかいですが、増えた骨で穴が塞がります。
当院の治療のながれ
- 1日目
- まず問診・口腔内診査・レントゲン診査などを行い状況を把握します。
急性症状がある場合は消炎処置や投薬を行います。
また当院で抜歯をするかどうかの判断をします。
当院で抜歯する場合は大まかな手術の説明をします。
より専門性の高い医療機関の方がよいと判断した場合は紹介状をご用意いたします。
- 2日目
- 抜歯を行います。
当日の体調が悪い場合は行わず、予約を変更します。
抜歯後は止血を確認してご帰宅してもらいますので時間に余裕を持っていらしてください。
- 3日目
- 抜歯の程度によっては翌日、消毒に来院してもらいます。
必要であれば鎮痛薬の追加投与をします。
- 4日目
- 抜歯の約1週間後に来院してもらい縫った糸をとり、消毒します。
問題がなければこれで終了とし、様子を見てもらいます。
抜歯後の対応
抜歯後に心配なことや不安なことがありましたら、当院へご連絡ください。
(電話連絡は診療時間内にお願いします)
- 1 腫れてしまった時
- 抜歯をすると少なからず、腫れたり熱をもったりはしますのでご安心ください。
気になる方は軽く冷やすといいでしょう。
- 2 痛みがつらい時
- 抜歯後約30〜60分で麻酔が切れます。
痛む時は我慢せず処方された痛み止めを飲みましょう。
当院ではロキソニン錠(60mg)をお出ししています。
1回2錠まで服用可能(高齢者の場合は1錠)です。
2錠服用したら6時間あけてください。
- 3 血が止まらない時
- 丸めたガーゼ(なければティッシュでも可)を10〜20分ほどしっかり噛んで止血します。
翌日まで唾液に混ざる程度の出血はあるでしょう。
頻繁にうがいをすると血餅が剥がれてしまうので気をつけましょう。
ドクドク出る出血はすぐに当院までご連絡ください。
- 4 痺れがある時
- 親知らずと下歯槽神経が近い難症例では、抜歯後に下唇や顎の皮膚に痺れが出ることがあります(出現率は0.6%)。
通常、投薬治療により数週間〜3ヶ月程度で治りますが、まれに長く続くこともあります(6ヶ月の残存率は0.06%)。
早期に対応するほど治りやすいのですぐに当院までご連絡ください。