- 歯ぐきから出血する
- 歯ぐきから膿が出る
- 歯がグラつく
- 最近食べ物が噛みにくい
- 口臭が気になる
- 目覚めると口の中がネバついている
歯周病とは、歯を支える歯肉や骨(歯槽骨)などが細菌によって炎症を起こし、侵されていく病気です。
初めは歯肉炎で歯肉が腫れるだけですが、進行するにつれて歯槽骨が溶かされていきます。そのため悪化すると歯がグラついたり抜けてしまうのです。
さらに、脳梗塞や心疾患、糖尿病など命に関わる全身疾患を引き起こしたり悪化させることも知られています。
歯周病治療の基本は、毎日の歯のブラッシングと、歯科医院での定期検診・クリーニングです。
ご一緒に歯周病治療に取り組み、お口の健康を取り戻しましょう。
歯を支える組織を「歯周組織」といいます。
具体的には歯肉・セメント質・歯根膜・歯槽骨で構成されています。
これらの歯周組織が歯周病菌が引き起こす炎症によって侵される病気が「歯周病」です。
歯周病は、その進行段階から「歯肉炎」と「歯周炎」に分けられます。
歯周病の原因となる主な細菌(歯周病菌)は30種類程度と言われています。
細菌は歯肉の表面に張り付いて歯肉に炎症(歯肉炎)を起こします。
そして歯肉の炎症を放置していると、歯と歯肉の間に「歯周ポケット」と呼ばれる溝ができます。
歯周ポケットの中に住み着き、毒素や酵素を分泌して歯肉や歯槽骨を攻撃します(歯周炎)。
こうして歯周病は歯肉の表面から奥へと進み次第に歯槽骨を破壊してしまうのです。
そして恐ろしいのは、ほとんど無症状で進行するということです。
気づいた時にはもう手遅れとなることもあります。
歯周病による
全身への影響
歯周病が進行する過程及び長期化することにより炎症性物質(TNF-α、IL-6など)が産生されます。
この炎症性物質が全身へ悪影響を及ぼします。
近年、以下の全身疾患への関連性が示唆されています。
①糖尿病
②肥満(メタボリックシンドローム)
③心血管疾患
④低体重児出産(早産)
⑤誤嚥性肺炎
⑥慢性腎臓病
⑦関節リウマチ
この中でも歯周病と糖尿病の相関は非常に強く、「歯周病は第6の糖尿病合併症である」と言われるほどです。
当院の歯周病治療の流れ
当院では正確な検査と初期治療を大切にしています
歯周病治療の流れを説明する前に、当院が大切にしていることをお伝えしたいと思います。
当院が大切にしていること、それは「正確な診断と初期治療」です。
歯周病治療の流れを説明する前に、当院の考え方をご案内したいと思います。
初診ですぐに治療に進むことはない
初診の方は、痛みがある場合や緊急の治療が必要な場合を除き、すぐに治療することはありません。
その理由は、正確な検査をとても大切にしているからです。
例えば、患者様が発熱したとしましょう。
他にも咳やくしゃみ、悪寒、だるさなどの症状があり、病院へ行く必要があると判断すると思います。
その際、本当に風邪なのか、インフルエンザなのか、はたまたコロナウイルスなのか、何度も聞いたり、検査して調べたりします。
これは歯科でも同じです。
病名がわからないまま治療すると、取り返しのつかないことになる可能性があります。
例えば、抜歯する必要のない歯を抜いたり、神経を残せる歯でも抜いたりしてしまう可能性すらあるのです。
そのため、初診でいきなり治療するのではなく、現在の口の中の状態を正確に把握し、患者さんと相互理解した上で治療することが大切だと考えています。
初期治療(歯周基本治療)に重点を置く
炎症のない健康的な歯ぐきを手に入れるためには、初期治療(歯周基本治療)が重要です。
これにより、型取りや詰め物、被せ物をするときに歯ぐきから出血しない、親和性の高い技工物を作ることができるようになるのです。
もちろん、インプラントや入れ歯、矯正治療においてもこの初期治療は非常に重要です。
つまり、初期治療(歯周基本治療)は、歯周病を引き起こす要因やリスクファクターを取り除き、再治療に至らない環境を整えることが最大の目的なのです。
基本的な歯周病治療は、歯科医師と歯科衛生士が力を合わせて行います。
歯周病には歯科衛生士の存在がとても重要です。
歯周病治療の基本的な流れ
- 1 歯周組織検査(1回目)、歯周病菌検査(希望者のみ)
- 口の中全体を詳しく検査します。
カリオテスト
唾液検査
歯周病検査
レントゲン撮影
口腔内写真撮影
など
歯周病菌検査で歯周病リスクが高い方には除菌外来をおすすめしています。
除菌外来へ
- 2 歯肉縁上のスケーリング
- スケーリング(歯の表面のプラーク、歯石、着色汚れなどを取り除く治療)は歯科衛生士が行います。
また、正しいセルフケアのためにブラッシング指導も同時に行います。
歯肉縁に付着したバイオフィルム(歯垢)や歯石の除去に重点を置き、正しいブラッシングと食生活の改善により、バイオフィルム(歯垢)のない口腔環境を自宅で維持できるようにします。
- 3 歯周組織検査(2回目)
- 症状(炎症の程度、歯周ポケットの深さ)に改善が見られるかどうか、再度検査を行います。
3mm程度の歯周ポケットが確認された場合は、その他の必要な治療やメインテナンスを継続します。
- 4 SRP
- SRPとはスケーリングとルートプレーニング’(歯の表面だけでなく歯周ポケット内のプラークや歯石を取り除く治療)を同時に行うことを指します。
SRPによって歯肉縁上および歯肉縁下のバイオフィルム(歯垢)および歯石の除去をします。
根面上の歯石や汚染された歯面をきれいにし、根面をつやつやにすることで、バイオフィルムが付着しにくい状態を目指します。
治療回数は症状により異なります。(2~6回)
- 5 歯周組織検査(3回目)
- 再度歯周組織検査を行います。
SRP終了後、3回目の歯周組織検査を行います。
歯周ポケットの炎症の程度や深さが改善されているかどうかを確認し、追加で必要な治療と歯周病安定期治療、メンテナンスを継続します。
骨吸収などに歯周ポケットが5mm以上残っている場合は、歯周外科治療が必要になることもあるので、現状と今後の治療方針(歯周外科治療かSPT・メインテナンス)を患者さんと一緒に確認しながら進めていくことになります。
- 6 歯周外科治療
- 歯肉を切開し、歯周外科治療を行います。
歯周外科手術の目的は、何よりも口腔内の良好な状態を確立することです。
歯周外科手術で原因を取り除いたとしても、歯周組織は再生しないため、必要に応じて歯周組織再生治療を行い、歯周組織を再生させます。
歯周外科治療については詳しく別ページで解説します。
歯周外科治療へ
- 7 歯周組織検査(4回目)
- 歯周外科手術後、4回目の歯周組織検査を行います。
この時点で、炎症のレベルや病気の進行が止まっていれば、必要な治療や歯周病安定期治療とメンテナンスを開始します。
歯周外科手術の結果、歯周病が進行していない場合は、その理由を患者さんに説明し、メンテナンスに進むこと、健康的な口腔内を維持することができます。
- 8 歯周病安定期治療とメンテナンス
- 歯周病安定期治療の目的は、再発リスクの高い部位がある場合、PMTC、SRP、咬合調整の組み合わせで歯周組織を安定させることです。
同時に、歯科衛生士は専門的なケアによって口腔内の健康を維持し、歯周病の再発防止に努めます。
定期的なメンテナンスにより、リスクを未然に防ぎ、良好な状態を維持します。
歯周組織が安定していれば「治った」と判断します。
その後歯周病以外の必要な治療(むし歯治療、根管治療、矯正治療など)を行います。
歯周病の進行段階
軽度歯周病
歯ぐきに炎症がみられ、ブラッシング時に血がでることがあります。
歯周ポケット(歯と歯ぐきの間)がやや深くなった状態で、歯を支える顎の骨(歯槽骨)が少しずつ溶かされ始めます。
中程度歯周病
炎症がさらに拡大し、歯槽骨も半分近くまで破壊が進み、歯がぐらつきはじめます。
歯ぐきの腫れや出血がひどくなるほか、歯のグラつきなども感じるようになります。
ここまでの段階では歯を抜かずに歯科での治療が可能です。
重度歯周病
歯槽骨が半分以上破壊され、歯はぐらぐらになります。
口臭がきつくなり、歯ぐきが退縮して歯のグラつきが悪化します。
治療をせずに放置すると、歯が抜け落ちることがあります。
この段階までくると、抜歯やインプラント、外科による歯周組織の再生治療が必要となります。
当院の治療法
歯周病治療で重要なことは
①セルフケア
②プロフェッショナルケア
の両方をしっかり行うことと言われています。
①のセルフケアとは患者さん自身で行うプラークコントロールのこと。
歯磨きやフロス、また歯間ブラシなどで効果的にプラークを落とせるようになりましょう。
当院ではスウェーデン式予防プログラム(全4回)でセルフケアのご指導はもちろん、虫歯・歯周病の病因論や予防方法も学んでもらいます。
ここは大切なステップで、当院が最も力を入れているプログラムです。
②のプロフェッショナルケアは当院の歯科衛生士が担当します。
具体的には、歯肉の下(歯肉縁下)に潜っている硬く固まったプラーク(歯石)を専用の器具を使い丁寧に除去していきます。
重症度により通院回数は変わります。(2〜8回)
ほとんどの方は治癒、または病状安定をしますが、それでも治らない方は歯科医師による歯周外科治療を行います。
治療期間
当院の歯周病治療は一部の歯周外科処置を除き保険診療で行っております。
また治療期間については重症度や他の治療(虫歯治療や欠損治療など)との兼ね合いによって変わります。
〈歯肉炎〉
予防プログラム4回のみ
〈歯周炎〉
・軽度:予防プログラム4回+2回
・中等度:予防プログラム4回+5回
・重度:予防プログラム4回+8回+外科治療
*目安としてお考えください。
定期健診の重要性
虫歯や歯周病の再発予防に定期健診が欠かせないのは言うまでもありません。
ここで興味深いデータをご紹介します。
「中等度から重度の歯周病」と診断された方が歯を失ってしまうまでの年数を調べたものです。
治療もメンテナンスも受けなかった方に比べ、治療もメンテナンスも受けた方の歯は3倍以上、長持ちしています。
そして最近では、歯周病が進行している患者さんほど、医科の医療費がかかっていると言う驚きのデータも出ています。
歯周病は口腔内に留まらず、全身の健康に悪影響を及ぼしています。
中等度・重度の歯周病と診断された人のメンテナンスによる残存数の違い
歯科治療 | 定期健診 | 10年間に失った歯の本数 | 1本の歯を失うまでの年数 |
---|---|---|---|
受けなかった | 受けなかった | 3.6本 | 2.8年 |
受けた | 受けなかった | 2.2本 | 4.5年 |
受けた | 受けた | 1.1本 | 9.1年 |
歯周病の程度別 医科の年間医療費(1人あたりの平均)
歯周病なし |
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---|---|
軽度 |
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中度 |
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重度 |
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無歯 |
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