歯周病治療Periodontal disease treatment
歯を支える組織を「歯周組織」といいます。具体的には歯肉・セメント質・歯根膜・歯槽骨で構成されています。これらの歯周組織が歯周病菌が引き起こす炎症によって侵される病気が「歯周病」です。
歯周病は、その進行段階から「歯肉炎」と「歯周炎」に分けられます。
歯周病の原因となる主な細菌(歯周病菌)は30種類程度と言われています。

歯肉の表面に張り付いて歯肉に炎症(歯肉炎)を起こさせるものです。そして歯肉の炎症を放置していると、歯と歯肉の間に「歯周ポケット」と呼ばれる溝ができます。
歯周ポケットの中に住み着き、毒素や酵素を分泌して歯肉や歯槽骨を攻撃します(歯周炎)。こうして歯周病は歯肉の表面から奥へと進み次第に歯槽骨を破壊してしまうのです。そして恐ろしいのは、ほとんど無症状で進行するということです。気づいた時にはもう手遅れとなることもあります。
歯周病による全身への影響

歯周病が進行する過程及び長期化することにより炎症性物質(TNF-α、IL-6など)が産生されます。この炎症性物質が全身へ悪影響を及ぼします。近年、以下の全身疾患への関連性が示唆されています。
①糖尿病
②肥満(メタボリックシンドローム)
③心血管疾患
④低体重児出産(早産)
⑤誤嚥性肺炎
⑥慢性腎臓病
⑦関節リウマチ
この中でも歯周病と糖尿病の相関は非常に強く、「歯周病は第6の糖尿病合併症である」と言われるほどです。
歯周病の進行段階
軽度歯周病
歯ぐきに炎症がみられ、ブラッシング時に血がでることがあります。
歯周ポケット(歯と歯ぐきの間)がやや深くなった状態で、歯を支える顎の骨(歯槽骨)が少しずつ溶かされ始めます。

中程度歯周病
炎症がさらに拡大し、歯槽骨も半分近くまで破壊が進み、歯がぐらつきはじめます。
歯ぐきの腫れや出血がひどくなるほか、歯のグラつきなども感じるようになります。
ここまでの段階では歯を抜かずに歯科での治療が可能です。

重度歯周病
歯槽骨が半分以上破壊され、歯はぐらぐらになります。
口臭がきつくなり、歯ぐきが退縮して歯のグラつきが悪化します。
治療をせずに放置すると、歯が抜け落ちることがあります。
この段階までくると、抜歯やインプラント、外科による歯周組織の再生治療が必要となります。

当院の治療法

歯周病治療で重要なことは
①セルフケア
②プロフェッショナルケア
の両方をしっかり行うことと言われています。
①のセルフケアとは患者さん自身で行うプラークコントロールのこと。歯磨きやフロス、また歯間ブラシなどで効果的にプラークを落とせるようになりましょう。当院ではスウェーデン式予防プログラム(全4回)でセルフケアのご指導はもちろん、虫歯・歯周病の病因論や予防方法も学んでもらいます。ここは大切なステップで、当院が最も力を入れているプログラムです。
②のプロフェッショナルケアは当院の歯科衛生士が担当します。具体的には、歯肉の下(歯肉縁下)に潜っている硬く固まったプラーク(歯石)を専用の器具を使い丁寧に除去していきます。重症度により通院回数は変わります。(2〜8回)
ほとんどの方は治癒、または病状安定をしますが、それでも治らない方は歯科医師による歯周外科治療を行います。
治療期間
当院の歯周病治療は一部の歯周外科処置を除き保険診療で行っております。
また治療期間については重症度や他の治療(虫歯治療や欠損治療など)との兼ね合いによって変わります。
〈歯肉炎〉
予防プログラム4回のみ
〈歯周炎〉
・軽度:予防プログラム4回+2回
・中等度:予防プログラム4回+5回
・重度:予防プログラム4回+8回+外科治療
*目安としてお考えください。
定期健診の重要性
虫歯や歯周病の再発予防に定期健診が欠かせないのは言うまでもありません。
ここで興味深いデータをご紹介します。
「中等度から重度の歯周病」と診断された方が歯を失ってしまうまでの年数を調べたものです。治療もメンテナンスも受けなかった方に比べ、治療もメンテナンスも受けた方の歯は3倍以上、長持ちしています。
そして最近では、歯周病が進行している患者さんほど、医科の医療費がかかっていると言う驚きのデータも出ています。歯周病は口腔内に留まらず、全身の健康に悪影響を及ぼしています。

中等度・重度の歯周病と診断された人のメンテナンスによる残存数の違い
歯科治療 | 定期健診 | 10年間に失った歯の本数 | 1本の歯を失うまでの年数 |
---|---|---|---|
受けなかった | 受けなかった | 3.6本 | 2.8年 |
受けた | 受けなかった | 2.2本 | 4.5年 |
受けた | 受けた | 1.1本 | 9.1年 |
歯科治療 | 受けなかった |
---|---|
定期健診 | 受けなかった |
10年間に失った歯の本数 | 3.6本 |
1本の歯を失うまでの年数 | 2.8年 |
歯科治療 | 受けた |
---|---|
定期健診 | 受けなかった |
10年間に失った歯の本数 | 2.2本 |
1本の歯を失うまでの年数 | 4.5年 |
歯科治療 | 受けた |
---|---|
定期健診 | 受けた |
10年間に失った歯の本数 | 1.1本 |
1本の歯を失うまでの年数 | 9.1年 |